考証ブログからAs Blogへ①

はじめに

はじめまして。

「As Blog(アズブログ)」は、As Loop(アズループ)がアロマンティック/アセクシュアル・スペクトラムについて紹介するブログです。

 

まずはじめに、本ブログを執筆しているメンバーから自己紹介させてください。 

自己紹介

(中村): はじめまして、中村と申します。普段は「なかけん」という名前で活動をしています。 17歳のときにアロマンティック・アセクシュアルを自認して以降、当事者として、様々な場で自身の体験をお話しています。自身の体験やこれまでの活動での経験を活かして、このブログで様々なお話ができたらと思っています。

 

(三宅): はじめまして、三宅です。これまでアロマンティックやアセクシュアルをはじめとするセクシュアリティについて研究してきました。その経験を活かして、調査に関することや知識面でお役に立てるよう頑張ります。

 

(今徳): はじめまして、今徳と申します!わたしはNPO法人にじいろ学校という団体で2016年からアロマンティックやアセクシュアル当事者に向けた交流会を定期的に開催しております。これまで多くの当事者の方とお話しさせていただいたという経験から、これからもコラムの執筆に精一杯取り組みたいと思います。

 

このブログは以上の3名でお伝えしていきます。

ブログを始めた経緯

私たちがこのブログを始めたのは、2022年1月から3月に放送されたNHKよるドラ「恋せぬふたり」がきっかけです。このドラマの考証を担当した際に作成した「考証チームブログ 」では、毎回ドラマの内容と関連づけながらAro/Ace調査2020の結果を紹介していました。本編の補足をしながら執筆したブログは、おかげさまで多くの方にお読みいただきました。

 

放送終了後、メンバー内でこれからの活動について話し合った結果、これからも情報発信の一つとしてブログを継続することになりました。

考証チームブログをご覧になったことがある方も、そうでない方もぜひ「As Blog」をお読みいただければ幸いです。

アーカイブの意味を込めまして、まずは今回含め複数回にわたって「考証チームブログ」を加筆修正した記事を掲載したいと思います。

 

「As Blog」オリジナルの記事は、その後の更新となりますので今しばらくお待ちください。

なお、「考証チームブログ」は「恋せぬふたり」のために執筆したため、紹介する内容がアロマンティック・アセクシュアルを中心にしている点はご了承ください(引用するデータもアロマンティック・アセクシュアルの結果を抜粋しているものが多くなります)。 

用語と定義について

最初にお話しするテーマは用語と定義です。 

 

「アロマンティック・アセクシュアル」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。アセクシュアルは知っているという方も、アロマンティック・アセクシュアルはあまり知らないかもしれません。アロマンティック・アセクシュアルは、「アロマンティック」と「アセクシュアル」という二つの言葉を繋げた用語です。

 

アロマンティックとアセクシュアルは、それぞれ「ロマンティック(romantic)」、「セクシュアル(sexual)」に否定を表す「ア(a)」を足した言葉です(*1)。 「シンメトリー(symmetry)=左右対称」と「アシンメトリー(asymmetry)=左右非対称」と同じような言葉のつくりをしています。 

ちなみに、セクシュアルに何か別の言葉を足した用語はアセクシュアルだけでなく、「ヘテロセクシュアル(異性愛)」、「ホモセクシュアル(同性愛)、「バイセクシュアル(両性愛)」など他にもたくさんあります。 (アセクシュアルを漢字で表すものとして「無性愛」が使われることがあります)

 

次に定義や表記について見ていきましょう。

 

私たちのグループでは、「アセクシュアルは性的指向の一つで、他者に性的に惹かれない人のことをいいます」 「アロマンティックは恋愛的指向の一つで、他者に恋愛感情を抱かない人のことをいいます」という形で説明することが多いです。しかし、当然のことながら他の定義や表記もあります。

 

 例えば、以下のような定義です(*2)。

アセクシュアル= 

①他者に性的な魅力を感じない 

②性的欲求が他者に向かない 

③性欲が他者に向かない 

④恋愛感情を抱かない+①~③ (④の場合はアロマンティックと一緒には使わないのが一般的です)

 

アロマンティック= 他者に恋愛的に惹かれない

表記の例としては、 Aセクシュアル(発音はエィとされる場合が多い)・Aロマンティックがあります(*1)。

このように、アセクシュアルやアロマンティックの定義や表記は複数あり、どれか一つだけが絶対的に正しいというわけではありません。

とくに上記アセクシュアルの定義④(恋愛感情を抱かない+①~③)は日本独自の用法として広く使われてきました(*1)。 性的な面と恋愛的な面で用語を分ける説明は、英語圏を中心に定着している考え方で、近年は日本でも用いられるようになってきています。

 

上で示した説明は、あくまで数ある定義の中の一つであると考えていただければと思います。 もし「自分に近いところがあるかも?」と思われる方は定義にあてはまるか否かに必要以上にこだわらず、今後も本ブログをご覧になって自分のあり方を考えるきっかけにしてみるのはいかがでしょうか。

 

ちなみに、2019年に実施された「大阪市民調査」によると、アセクシュアルを自認している人は市民人口の0.8%だったと報告されています(*3)。 少ないように感じるかもしれませんが、同調査では同性愛者と近い割合だったことが報告されており、一定数の人が自認していることがわかります。 人口の割合と認知度は必ずしも一致しないのかもしれません。

 

以上、私たちの自己紹介とアセクシュアルやアロマンティックの用語や定義について簡単にお話しいたしました。 次は、私たちが行った「Aro/Ace調査2020」のデータをご紹介しながらお伝えします。

行為への嫌悪感

Aro/Ace調査2020ではいくつかの行為に対する嫌悪感の有無について質問しています(複数回答)。

その結果が次のグラフです。

もっとも嫌悪感を持つ割合が高かったのが「キスをする」で75.0%でした。「手をつなぐ」は27.9%、「ハグをする」は26.9%、「握手する」は9.7%でした。一方、「どれにも嫌悪感を覚えない」も22.4%になりました。 (「どれにも嫌悪感を覚えない」と他の選択肢を一緒に選んだ場合には、「どれにも嫌悪感を覚えない」を誤入力として処理しました)

 

ここから、手をつなぐこと、ハグをすることに「嫌悪感」(≒苦痛)を覚えるという回答がある一方で、「どれにも嫌悪感を覚えない」という回答も一定数みられました。 アロマンティック・アセクシュアルの当事者の中で多様性があることがわかります。

パートナーを望むか

次に、Aro/Ace調査2020では、「恋愛・性的でないパートナー」を望むか否かについても質問しました。 その結果が次のグラフです。

グラフをご覧いただくとわかるように、51.2%が「1人、パートナーを望む」という結果でした。次に多かったのが「望まない」で21.7%、次に多かったのが「グループを望む」で15.5%です。そして、「複数人、パートナーを望む」は6.6%でした。 ここからパートナーなどを望むという回答が多いことがわかりますが、一方で「望まない」という回答も一定数あるということがわかります。

 

どのような関係性を望むか/望まないかということはアロマンティック・アセクシュアルの当事者の中でも一人ひとり違うということを知っていただければと思います。

他の人に恋愛感情を抱き、性的に惹かれる人が一人ひとり違うように、アロマンティック・アセクシュアルの当事者も一人ひとり異なるということだと思います。 (もちろん似た感覚や経験などにより、傾向はあるかもしれません)

 

さらに詳しく知りたい方はこちら(調査報告書)をご覧ください。

 

今回は私たちの自己紹介にはじまり、本ブログ開設の経緯、アーカイブとして「考証チームブログ」を修正した記事などを掲載しました。次回も「考証チームブログ」の概要版を掲載予定です。


*1

三宅大二郎・平森大規(2021)「日本におけるアロマンティック/アセクシュアル・スペクトラムの人口学的多様性――『Aro/Ace調査2020』の分析結果から」『人口問題研究』第77巻,第2号,pp. 206-32.

*2 Aro/Ace調査実行委員会(2021)

『アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020調査結果報告書』(2022年4月12日取得) 

*3 Hiramori, D. and Kamano, S. (2020) "Asking about Sexual Orientation and Gender Identity in Social Surveys in Japan: Findings from the Osaka City Residents’ Survey and Related Preparatory Studies, " Journal of Population Problems, Vol. 76, No. 4, pp. 443-466.

 

【調査概要】

調査名:アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査2020(Aro/Ace調査2020)

調査方法:ウェブ上のアンケートフォームを利用(Googleフォーム)

 *ウェブサイト、Twitter、LINEグループ等で周知 

回収期間:2020年6月1日12:00~2020年6月30日12:00 

調査対象:以下の1.~3.全てに該当する方 

1.アロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム

(アロマンティック、アセクシュアル、ノンセクシュアル、デミセクシュアル、デミロマンティック、リスセクシュアル、リスロマンティックなどその他周辺のセクシュアリティ)を自認している、またはそれに近い、そうかもしれないと思っている方  

2.日本語の読み書きをする方(国籍、居住地は問わない) 

3.年齢が回答時13歳以上の方

総回答数:1693回答(有効回答:1685)

 

最大設問数:98問(内5問が必須項目) 


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